7月の暑い、暑い日のこと。等々力渓谷に足を運びました。
近くで用事があって、少し早く着いたので「これは!」と思って駅から渓谷の方へ。

等々力渓谷は、生け花のお稽古に向かうときに通っていた場所。
会社員時代、平日休みだった私は週末のお稽古になかなか参加することができず、先生がご自宅を解放してお稽古をしてくださっていました。

確か、はじめて半年くらいは片道2時間ほどかけて通っていた記憶があります(笑)
そんな状況でも「行きたい」と思えたのは、その機会が私にとってとても貴重な時間だったから。

和室に置かれている、たくさんの花器の中から、お宝探しのように〈今の気分〉〈今日の花〉に合わせて選ぶワクワク感。
静かなお家の中で、もくもくと生ける没入感。
生け終わった後に、先生に見てもらいながら
ERI「本当はこうしたいんだけど、うまく固定できなくて…」
先生「だったら、こういう方法もあるのよ。ここはちょっと空間を開けてあげると…ほら!こんな表情にすることもできるのよ〜」
そうやって自分では考え付かなかった方法や選択肢を知れる感動。
そして最後はお茶をいただきながらのゆっくりおしゃべりタイム。
ERI「今週、忙しかったんですよ〜」
先生「今日のお花は伸びやかだったわね〜。忙しいけど充実している時かしら?」
なんて他愛もないけれど、何よりも大切な時間でした。


今でもあの時間を思い出すと、日常の慌ただしさと、忙しさ、時間のなさ、やることが目白押しな日々の中で、ポッカリと時間が止まった異空間に迷い込んだような、とても満たされた感覚が蘇ります。
現実世界から異世界へ向かうように、等々力渓谷を歩きながらだんだんと、気持ちを切り替えていたのかもしれません。

37度を超える(!)今年の暑すぎる夏でも、渓谷は少しひんやりとしていました。茂った木々で遮られた太陽は、一部にだけその強い光を差し込んでいました。
いつ来ても、身体の中に風がす〜〜〜っと通るような、呼吸が一段と深くなるような、そんな感覚になります。
数年前の感覚をふわっと身に纏いながら、改めて訪れてみると、変わらずとても気持ちいい空気が流れていました。