〈香り〉がこんなに日々の生活の中で大切になるとは、思ってもいませんでした。
思い返してみると、香りがその時の感覚や気持ちをふわっと思い起こさせてくれていたことがたくさんあります。小学校に通うときの雨あがりのアスファルトの匂い。誕生日に近付いている…そんな心躍る気持ちと共に吸い込んでいた金木犀の香り。留学中に乾燥機から出てきたふわっふわなタオルと一緒に包まれた柔軟剤の匂い。
気づけば昔からアロマや、お香などが好きでしたが「私にとって香りってものすごく重要なんだわ!」と深く気づいたのは、実はここ数年です。
最近、セッションの中でも、友人との会話の中でも〈香り〉についての話題が続きました。そこで引き出しの奥から、香りものをごっそりと引っ張り出して整理したり、精油ボックスを買って入れ直したり…ということをしています。
私、とても呼吸が浅かったのです。集中している時は特に。
会社員時代、日々スケジュールに追われ、お客様とのやりとり、チームのマネージメント、常にタスクは山盛り。本当にエンドレスで走り続けている感覚でした。そうやって忙しさが重なりに重なりピークになると、感覚的に「内臓が痛い…」そんなことがまま起こっていました。
ストレスといえばひとことですが、今思えばその原因のひとつは〈呼吸〉でした。会社を辞めて独立し、もうこれまでのような形でタスクや時間に追われる必要もなくなりました。自分でチョイスし、バランスを取ることができる。それなのにパソコンに向かって作業をしていると…時々同じ症状が出てきたんです。
あれ?おかしいな…誰かに合わせたスケジュールで急いでいるわけでもないし、ストレスと思うようなことは何もないし…でも身体は「ちょっと〜!」と何か言っている。
それで「何が原因だろう?」「どうしたらこの症状を緩和できるのかな?」と思いながらいろいろと試していきました。それでわかったのが、呼吸の浅さでした。特にパソコン作業をしているとき!目の前のタスクに全集中するあまり、身体の感覚を…飛ばしていたんですね。感じないように。自分で意識しないように。
早く進めたい、早く終わらせたい、時間がないから。やることがたくさんあるから。いいものにしたい、もっといいものにしたい。まだまだできるはずだから。そうやって、20代から仕事中にまわり続けていた言葉たちが焦りの気持ちを生み出し、その気持ちが緊張状態を作り出し、そして緊張状態の身体は呼吸を浅くしていっていたことに気がつきました。
Maxパフォーマンス〈思考×身体〉の組み合わせ
本来、人がゾーンに入ってとても高いパフォーマンスをするときの特徴として、集中&リラックスと言われています。身体はリラックス×思考はフォーカスモード。これがマッチした状態になることでその人が本来持つパフォーマンスを引き出しやすくしてくれるというものです。
私の場合は、思考はフォーカスモードに入っているけれど、身体はリラックスしているどころか…感覚を感じさせないくらい緊張状態をキープしてしまっていたんですよね。過度なオンモード。
その時の身体はどんな状態だったかというと、呼吸は浅く、奥歯ではぐ︎〜〜っとものすごく食いしばりながら、4〜5時間ぶっつけ。休憩なしでオンモードが続いていたんですね。それ続けたら、身体が悲鳴をあげるのは当然ですね。笑
香りはオートマティック〈深呼吸装置〉
香りを楽しもうとすると、私たちは自動的に深呼吸になります。好きな香り、心地い香りって、自然と感じたいと思うから。
無自覚に緊張状態をキープしていたことに気づいた私は、好きな香りを意識的に、身近に置くようになりました。お香のこともあれば、アロマのこともあるし、何よりも好きなのは生花です。
ふわっと自分の好きな香りが漂ってくると、自動的に深呼吸しているんです。そしてその深呼吸1回で、いとも簡単に「はっ!」と緊張していたことに気づき、リラックスの方へ意識を向け、自分の状態が変わっていくのを実感するようになっていきました。
好きなものに包まれる仕組み化
以前は「こうしたいな」と思うと、タスクにしていかにそれを忘れずにやるか。意志の力で物事を動かそうとしていました。
でも…これまでの経験からも、心理の学びからも、意志の力や意識の力で自分を動かそうとすることは基本的に辞めました。ものすごーく効率が悪いし、ものすごーく難しいことだったんだ!いうことを痛感したからです。(もっともっと早く、10代で知りたかったよ。)
なので、今ではなんでも
- 自動でそうなるように習慣化する
- 自然とできるようになる仕組みづくりをする
この習慣化や仕組み化も人それぞれ、自分に合ったやり方があるようです。いつもいい感じのリラックス状態でいるために、仕事中30分ごとにアラームかけてブレイクを入れるとか、「リラックスしよう」「深呼吸しよう」という方法もあるかもしれませんが、私はあまりその仕組みにはワクワクしませんでした。
それよりも好きな香りが溢れる空間に身を置いて集中しながらも、「あぁ〜いい匂いだな〜」って五感が勝手に反応しちゃうような仕組みづくりの方が向いています。作業をしている間に、深呼吸&リラックスするためには、香りが私にもっとも合っているようです。
いい状態になるのに必要なのは1分
過緊張状態を生み出してしまってる!と気づいてすぐの頃は「状態を変えるために…時間をとって深呼吸しなきゃ。」「気分を変えるために、お散歩でもしようかな。」「あ〜ちょっとテンションが上がらない、何か刺激を!」そう思って、一通りいろいろ試してみました。
でも身体を、自分自身をいい状態にしてあげるには1分で十分でした♪深呼吸して、一旦その状態のループから抜け出すこと。そしてそれが「香りというオートマティック深呼吸装置でできてしまうんだ!」という発見!
嗅覚は人間の五感のうち、もっとも原始的なシステムで、視覚や聴覚など他の五感とは、情報を処理する経路が違うと言われます。香りと共にパッケージングされている記憶って、鮮明だったりしませんか?「香りってそんな意識したことない…」って方でも、もしかすると好きな香り、心地よい香りを1つ見つけてみて、生活の中に取り入れてみると、意外な発見があるかもしれませんね。
これまで私にとて身近すぎて、無意識だった香り。自覚してからはより一層、楽しみが増えています。「今の時期はどんな香りがピンと来るかな〜?」「どの香りだと、どんな状態になるかな〜?」香りと自分の感覚のマッチングをこれからも探求してみようと思います。